EP3 : MXPA10「素ヤリス」向けクラッチ開発

サーキットでは見えなかった違和感。街乗りで浮き彫りになった“曖昧なミート感”と改善依頼まで

前回までで、レリーズベアリング周りの干渉問題(いわゆる「LadiesWearing」起因のトラブル)は解消し、組付け面の課題はクリアしました。
そして今回、いよいよ「フィーリング評価」のフェーズに入りました。

ところが――。
サーキットでは問題が見えにくく、街乗りで一気に違和感が顕在化する、非常に示唆的な展開になりました。


1. タカタサーキット:40周では“違和感なし”

まずはタカタサーキットで周回テストを実理解像度で確認。
周回数は約40周。ドライバーからの一次フィードバックはシンプルでした。

  • 「特に違和感はない」

  • 「問題としては感じない」

組付け後の初期評価としては、いったん安心できる結果です。
少なくともサーキット走行という負荷条件では、致命的な破綻は表に出ませんでした。


2. 岡山へ移動:街中走行で感じた“決定的な違和感”

次はジムカーナテストに向けて岡山へ車両を移動。
ここで状況が一変します。

街中移動で運転した瞬間から、強い違和感が出ました。
違和感の正体は――

「クラッチがつながるフィーリングが曖昧すぎる」

  • ペダル踏力が驚くほど軽い
    → 一瞬「クラッチが本当に変わったのか?」と疑うほど

  • しかしミート(つながり)のタイミングが非常に曖昧
    → つなげにくい

  • 特に坂道発進が難しい
    → 発進操作が安定しない

操作している感覚としては、
「繋がっているのか」「滑っているのか」が読み取りづらい状態でした。


3. “現場の認識差”が発生:ドライバーは指摘していない?

この違和感をタカタでテストしたスタッフに共有したところ、返ってきたのは意外な反応でした。

  • 「当時、ドライバーからその指摘はなかった」

念のため、当日試走に関わったメカニックにも連絡し、ドライバーのコメントを再確認。
結果は同じで、「特に違和感のある発言はなかった」とのことでした。

ここで重要なのは、
“サーキットでは気づきにくく、街中で顕在化するタイプの症状がある”
という点です。


4. 実際に乗ると「滑っている感じ」さえある

自分で乗ると、とにかく乗りにくい。
さらに、単なる“曖昧さ”に留まらず、感覚としては

  • 「滑っているような感触」

  • 「どこで繋がっているのか掴めない」

という領域に入っていました。

サーキット走行では問題が表面化しないのに、街中の発進・低速域で強く出る。
この時点で、単なる感覚の差ではなく、何らかの機械的要因が潜んでいる可能性が高いと感じました。


5. なださきで確信:街中で感じた違和感は“間違いではなかった”

そしてなださきで走行テストを行ったことで、状況は“核心”に変わります。

  • 明らかにクラッチが滑っている感触がある

  • フィーリングはやはり曖昧

  • 街乗りで感じた違和感は、思い違いではないと確信

「曖昧でつなげにくい」ではなく、
**“滑りの兆候がある(もしくはそのように感じる)”**という段階へ進んだわけです。


6. メーカーへフィードバック:改善提案を正式依頼

ここまでの結果を整理し、メーカーへフィードバックしました。
依頼したのは、単なる「調子が悪い」ではなく、

  • 改善点の特定

  • 改善方法の検討

  • 具体的な対策案(仕様変更・部品変更・組付け条件の見直し等)

です。

試作開発では、「症状の共有」だけで終わらせると改善が進みません。
今回は、サーキットと街中での“出方の違い”も含めて共有し、改善提案を求める形にしました。


まとめ:サーキット評価だけでは足りない

今回の気づきは明確です。

  • サーキット走行(高負荷・高回転域中心)では違和感が出ない

  • 街乗り(低速域・発進・半クラ領域)で問題が顕在化する

  • その症状は「曖昧さ」から「滑り疑い」へ進行して見える

  • よって、評価フェーズでは “街乗り領域の再現”が必須

次回は、メーカーからの回答(改善案)と、その対策の方向性を整理していきます。

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